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エッセイ

特別支援学校
2021/01/21
繋がりと支えの中で生きる~えがおカフェプロジェクトの経験から学んだこと~
 

私の勤務校は、今年で創立60周年になる特別支援学校です。校舎は古いですが今日まで大切に使ってきました。そんな私たちの学校が今年度大きく変身する出来事がありました。その出来事を通じて「教師」という仕事の素晴らしさを実感することができました。そのエピソードについて記します。 

私の学校の高等部では「作業学習」という授業に取り組んでいます。ものづくりや、サービス業務を通じて将来の社会自立に向けて必要な力を学ぶ時間です。作業班のひとつにカフェ班があります。

カフェ班では、これまでの4年間レシピや作り方を工夫し、知的障害のある子供たちが教師の手を借りず、最初から最後まで一人で作ることができるお菓子を、飲み物と共に近隣の高齢者施設などで提供する出張カフェに取り組んできました。試行錯誤しながら取り組みを続けていましたが、実際のカフェ運営には多くの課題がありました。使用している器具は調理室においてあるものでしたので、使い勝手が悪かったり、数が不十分でした。また、カフェ運営の練習をする場所は、間借りした教室で行なっていたので非効率でした。

そんな状況を改善するために、臨時休校期間を活用して「使わなくなった作業室をリフォームし、保護者、地域の方々、全校の幼児児童生徒が集い、交流できる部屋、繋がれる部屋、笑顔になれる部屋(交流室:えがおルーム)をつくる」「その部屋でカフェを運営する」というクラウドファンディングにチャレンジしました。45日間のチャレンジでしたが、総勢135人から229%という目標金額をはるかに上回るご支援を頂戴することができました。その中には、旧知の友人や自分たちの家族、教員仲間、在校生の保護者?きょうだい?ご親戚、卒業生の保護者に加えて、卒業生本人もいました。一生懸命働いたお給料から「大好きな学校のために」「先生が頑張っているから」とご支援を下さったのです。何よりも嬉しかったです。

チャレンジを達成したことで得ることができた資金で「あったらいいな」と考えていた多くの物品(えがおルームの備品、本格的な製菓の道具など)を購入することができました。購入した備品は、生徒たちと共に組み立て、設置をしました。製菓道具はどれも使いやすく、子供達の作業効率が上がり、お菓子の品質も向上することができました。このような情勢の中ですが、校内の教員相手に接客練習をしたのち、ご支援くださった保護者や大学の先生、卒業生などをお客様としてカフェを開催することもできました。 訪れた方が自分たちの作ったお菓子を美味しいと食べてくださり、「素敵なカフェになりましたね」と褒めてくださり、生徒たちも笑顔でいっぱいでした。目指していた『えがおルーム』を作ることができました。生徒達と一緒にカフェ運営をしたり、ご支援をくださった方々へリターン(御礼の品や、御礼の手紙)を準備したりする中で、夢を共有できたこと、夢を実現できたことが、こんなにも嬉しいということ、人と共有することで喜びが何倍にもなることを味わうことができました。そして、「人との繋がり」「人からの支え」「繋がる場所をもつこと」の大切さを改めて実感することもできました。

新型コロナウィルスの影響で世界は大きく変わりました。人との繋がりが途絶えてしまい、孤独を感じている方も多くいらっしゃると思います。でも、このような時だからこそ、「共有できる夢を抱くこと」で、お互いに繋がり、支え合うことができること、そして、私たち教師も、生徒も、誰もが「繋がり」と「支え」の中で生きているのだということが分かりました。

教師という仕事は、人を育てる仕事です。それに加え、教育活動を通じて人と人を繋げること、繋がる場所作りができる仕事です。このチャレンジを通じて改めて感じた教師という仕事の素晴らしさを噛み締めながら、今後の学校運営、教育活動に取り組んでいきたいと思います。