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エッセイ

小学校
2021/01/20
クラスで取り組んだ大縄とび
 

292回。3年生が3分間に跳んだ回数である。「みんなならいけるよ。」「絶対目標を達成しよう。」「みんながんばろう。」そのような前向きな言葉が飛び交うほど,大縄を通してクラスは大きく成長した。292回は,その年の所属校の市の3年生の部の大会記録となった。

初めての大縄の記録は30回だった。ふざけたり,ミスした相手を責めたりと雰囲気は最悪だった。そのような雰囲気で大縄をすることに意味はなく,クラス全体に大縄の今後の取り組み方について問うた。「全力でやりたい。」全員がそう選び,大縄の目標をクラス全員で考えて,「大縄を全力で取り組み記録をのばす。」に決まった。併せて,まず100回を目指すことに決まった。クラス全体の気持ちを高めるため,毎回の練習後に振り返りを書かせ,学級通信にその振り返りを掲載しクラスでその都度共有した。「縄の入り方がよくて「そのちょうし!」と言ってもらえた。うれしかった。」(振り返り)練習を重ねる中でプラスの言葉が通信上に出てくるようになってきた。

少しずつ跳べる回数が増えていき,4週目に128回を記録し,初めて100回を達成できた。「今日4時間目に,さい高きろくの128回を出すことができました。うれしかったです。えいぞうで見ても,とび方はよかったと思います。」(振り返り)このときの振り返りは,ほぼ全て前向きな文章が並んだ。次の目標は150回に決まった。

翌日に振り返りを共有し練習に挑んだが,クラス全体の気持ちは明らかに緩んでおり記録も70回止まり。練習後に話し合いを行い,次のような意見が出た。「振り返りに書くだけで実際に取り組めていない。」「大縄は全員でやるものだから全員の気持ちが大事。」気持ちの緩みや子ども間の温度差はどうしても出てくるので,その都度話し合う機会を持つようにした。一番がんばっている人に気持ちを合わせることが重要である。「今日はほとんどの人がちゃんとできていなかった。次こそは,ぜったいに,みんながなっとくできるような大なわの練習がしたい。」(振り返り)

全体練習だけでなく,自主的に練習する子どもが増えていく中,5週目に今までで最高記録の133回を記録したがクラス全体に悔しさが見られた。がんばっているからこそ出てくる感情であり,150回の目標を達成したいという強い気持ちが表れていた。「みんなしっかりがんばれていた。もっとがんばればきっと150回はいけるはず。今日,150回いかなかったのは,くやしいけど,みんなならいけるよ。」(振り返り) 翌日。悔しい気持ちで溢れた振り返りを共有する中で,クラスの気持ちの高まりを感じた。「絶対150回いこう!」そのような言葉がたくさん出る中,163回を記録した。子どもたちの可能性はすごいものがあると改めて痛感した。「とうとう150回をこせた。163回いけた。うれしい。だけど,気をゆるめずに,つぎは200回を目ひょうにがんばろう。」(振り返り)次の目標は200回に決まった。

そして,7週目に225回を記録し,200回の目標を達成した。「今週の記ろくは,225回でした。みんななら,もっともっといけると思います。30回のときは200回なんてとべるなんて思っていなかったです。みんなすごい。わたしも,もっともっと練習してがんばりたいと思います。」(振り返り)

10週目の市の大会において292回を記録し,1位となった。嬉しさと達成感に溢れた笑顔が見られる中,泣いている子どももいた。悔しい思いも,ときには辛い思いもしたと思う。それでも前を向き,支え合い,最後までやり遂げた子どもたち。「みんなのがんばりは言葉ではいえない。みんなと大なわができて本当によかった。これからもみんなで色んなことをがんばりたい。」(振り返り)

子どもたちのがんばりや成長を一番近いところで支え,見届けることができる教師の仕事は尊い。大縄とびの取り組みはまさに教師冥利に尽きるものとなった。