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エッセイ

中学校
2020/12/14
60歳のアオハル(青春)
 

私、60歳です。つまり世間的には還暦を迎えた訳です。昭和35年生まれ、教師生活40年をあと半年で迎えることになります。60歳で青春?はい!汗もかくし恥もかきます。悔し涙も流すし、もちろんうれし涙も…ハラハラドキドキもするし、毎日すったもんだしながら教師をやっています。教科は、保健体育、現在3年生の担任をしています。若い頃は、「70歳まで働きます」と半分冗談で言っていました。50歳頃までは、「まだまだ若いもんには負けません」と公言していたし、階段の2段抜かしの移動も悠々とできていました。しかしさすがに50代の後半にもなると、見えにくい、聞こえにくい、よくつまずく、覚えられない、物(特に老眼鏡)をよく紛失するなど老化現象に悩まされる日々の連続。それでも何とか教師を続けていられるのは、数々の出会いのおかげだと最近強く感じています。良いことも悪いことも全て必要で無駄なことはないと今なら思えます。有り難いことに、「毎年今が最高!」と年を重ねるごとに思えています。昔の事を振り返る暇もないほど目の前のことに日々追われていますが、教師は天職だと思えます。うまくいかないことも多いですが、困難や試練は人を育てます。そして教育は、生きる喜びを与えるものであってほしいと願っています。これから希望を持って教職の道へ進む若者たちに私の40年間のエピソードを紹介することが何かお役に立つならと思い、続けることにいたします。

☆ありがとう???教育というものは、「共に育つこと→共育」と誰かに教えられた。共にしくじり、助け合い、与えて与えられる。だからたくさんの「ありがとう」が溢れている。

☆日本一???全国リズムダンスふれあいコンクールで優勝二回、全国大会連続出場と入賞継続中。体育の授業で教えたダンスを通して子供たちの夢が広がる。日々の積み重ねの中で超えられるかどうかわからないギリギリの課題を与えることにより無限の可能性が出てくる。出会った女子には、前後開脚180度を目標にさせる。柔軟性は、努力の量と正比例する事を実感させて自信をつけさせる。最終的には、学校の小さな舞台から全国の舞台で堂々と踊れるようになった。ダンスの力?笑顔の力?子ども達の力に大拍手。

☆大阪優勝???16年間の体操部の顧問をしていて何回か達成できた。小学校の時。跳び箱が跳べない私を導いて下さったのは小学校5.6年生で出会った恩師。体育が一番嫌いだった私が中学校で体操部に入部し、体育の道を選択し現在に至る。出会いそして教育の力はすごいと再確認。

☆子供たちの成長??? 今まで見下ろしていた子供と目線が合う高さになり、やがて自分が見下ろされるようになる。身体の成長はもちろんのこと、心の成長を感じられたとき、私の心は満たされる。日々の生活の中で、他人への気遣い、感謝の心、自立心、挑戦心、行動力、創造力、積極性、協調性などが垣間見られた時、今までの努力や苦労が報われる。

☆教えが生きている???数年前の結婚式会場での出来事。エレベーターの扉が開くと同時に目に入った教え子3人の姿。私の姿を見ると美しい「気をつけ」タイミングのそろった礼にドキッとした。学級や体育での教えが卒業して十年経っても生きている。感無量。
ちなみにこの時の新郎は、小学校の教師、勝手に私のモットーである「厳しさは愛」の言葉をTシャツの背中に記し、額に汗している。

☆笑顔???本年度の体育大会でも集団演技での子ども達の笑顔率は100%。満足なり。日々の生活でも「教師集団の笑顔なくして子ども達の笑顔はなし」目ざそう、笑顔溢れる職員室。

☆体育が好き???体育嫌いが好きに変わる。新体力テストの数値は、どの学校、どの年代をとっても全国平均を越え、トップレベルに至る。子どものせいにしないこと。地域差、環境差はあっても諦めないことを自分に言い聞かせている。振り返ると最初の授業は、「死ね」の連続、ポケベル鳴りっぱなし、誰も集まらない、椅子を投げられるといった状況もあった。それでも新体力テスト全国優秀校やダンス全国優勝を経て全国優秀校として表彰された。すぐには無理でも、「感動は一日一日の積み重ね」何よりも体育を好きになってくれることが嬉しい。

☆同じ道に進んだ教え子と我が子???体育の教師になった教え子に招待されて出向いたある中学校での体育大会。私が(教え子達に)してもらっていたように朝礼台で生徒達から花束をもらい感謝の言葉を胸に涙する彼女。その姿を後ろから眺める私。泣けた。そして我が子も教職の道へ。まだまだ悪戦苦闘中のようだが、同じ道に進んでくれたことは単純に親として嬉しい。

☆卒業生の活躍???今年プロデビューするボクサー、すでに活躍している力士、全国制覇したチアリーディングのリーダー。教え子の追いかけも趣味の一つ。インターハイや近畿大会、地区大会等応援に出かけるのも楽しみの一つ。お陰で記念Tシャツがどんどんたまる我が家。

☆立派な母になったやんちゃ娘???出会いやご縁というのは、不思議なもの。以前転勤した年に出会った女子高校生並のやんちゃ娘(化粧?ルーズソックス?ミニスカート?ポケベル所持など)彼女には随分手こずらされたが、今の職場で、保護者として出会う。その当時の面影はなく、彼女から声をかけられた。真夏の昼下がり、横断歩道で子ども達の命を守りながら旗を持つ彼女の姿に感動。しかも妊婦さん。思わず、「妊婦さんがこの炎天下に何してるの??あなたがすることないやろ。誰か変わってもらえないの???」と言うと「今、人手不足で誰もいないので。」とのことだった。卒業してから様々な人と出会って、教育や経験が彼女を素敵なお母さんに育てたのだと実感した。当時自分の無力さを感じていたが、自分が何とかできなくても大丈夫。「人は、成長できる」と確信した。20代、30代前半の頃は、目の前で納得?説得させたかったが、(自分の子どもができてからは)「今、わからなくてもいい。高校生になったり、大人になった時にわかることがあればいい。」などと思えるようになった。今でも彼女は、集団登校に遅れがちの児童を学校まで送り届けていて、頭が下がる。

☆自分も成長???言うまでもなく、この年になっても毎日学んでいる。白黒はっきりさせることより、答えや方法はたくさんあると知る。身体の柔軟性は衰えているが、心の柔軟性は進化している。年を重ねると丸くなると言われるのはこのことか。

☆終わりに???今でも青春真っただ中、コロナの影響で描いていた最終章とは全く違う今、多くの試練と制限の中、身体は衰えつつも心は燃え、瞳は輝いているつもりです。たくさんの人たちに支えられ助けられながら、60歳の負けず嫌いの挑戦はもう少し続きます。