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エッセイ

特別支援学校
2020/10/06
生徒を信じ、認め、承認していくこと

「生徒を承認していくこと」「存在を認めていくこと」それが教師の仕事だと確信しています。私は、特別支援学校の教師です。視覚に障害があったり肢体不自由があったりする生徒たちは、周りからサポートを受けやすいと思います。それは、周りの人たちとの違いが明らかにわかるからだと思います。しかし、知的障害や情緒障害など、周りとの違いがわかりにくい障害をもつ生徒もたくさんいます。最近は社会的にも、「ADHD」や「ASD」という言葉も認知されてきているように思いますが、実際は個性的な人だなとかそういう性格の人だと判断されることが多いように思います。

私がこれまで関わってきた生徒たちの中にも、ADHDやアスペルガー症候群と診断を受けた生徒がいました。その生徒の中でも、上手くいかなかったり、イライラするとやりきれない思いから、周りの生徒に暴言を言ったり、他害行為になってしまう生徒がおり、周りの同僚から、「もっと厳しく指導をする必要があるのではないか」という声が数多くありました。私も同調圧を感じ、そのような指導が適切なのかと思うこともありました。しかし、その生徒の元担任である同僚の一人は、どんなに生徒が批判されても、その生徒の味方になり、ケース会議等では、生徒のいいところを一生懸命語り、みんなで支えて行こうと語りかけていました。

私自身も、その生徒と毎日接し、少しずつ距離も縮まってきたように感じたある日、生徒から「どうしたらイライラしないようになるんかなぁ」という相談を受けました。その時、本人も辛い思いをしているんだなと、ハッとさせられた記憶があります。これまで、生徒の暴言や暴力行為に惑わされ、その行為を止めることに必死であった私自身の心に恥ずかしさを覚えました。一番困っているのは「本人なんだ」と生徒の立場に立って考えるきっかけとなりました。

それからは、まずは生徒のことを信じて、認めて、承認していくように努めました。「おはよう」のあいさつは大袈裟にしたり、好きなゲームの話題について話に行ったりするなど、常に生徒の存在を認めていこうと心がけました。「いつも見てるよ」というメッセージを送るようにしました。生徒が急にイライラするかもしれないという不安を抱きながら、生徒を認めていくことが、生徒の行動変容へと繋がると信じて話をしに行きました。 

今では、その生徒は学年が上がり新しいクラスになりました。大きな環境の変化であったにも関わらず、とても落ち着いて過ごすことができています。それはなぜかという問いに対して答えるとするなら、周りの大人たちや友達などの環境面が、その生徒を承認する雰囲気に変化していったことが大きいと感じています。また、生徒自身も見てくれているという承認の土台を感じられるようになってきたことも行動変容に大きくつながっているのだと信じています。