本文へ

授業探訪 生徒指導と教育相談の実践的課題

授業を行う家近教授と餅木特任教授

生徒指導と教育相談の実践的課題

高度教職開発部門 家近 早苗 教授?餅木 哲郎 特任教授

 「講義室の中央にはホワイトボードと教卓が置かれ、前方の電子黒板にはZoomで参加している院生が映し出されています。高度教職開発部門の家近早苗教授と餅木哲郎特任教授は教卓の前の立ち、家近教授はカメラに向かって「本日は、学級集団の問題と学級崩壊について、事例を踏まえながら進めていきます」と話し始めます。

 この「生徒指導と教育相談の実践的課題」は、研究者教員の家近教授と、実務家教員の餅木特任教授の2名の教員が「ティームティーチング」により授業を展開しています。それぞれ違う視点から授業を進める中で、教員同士で議論を行いながら解説することもある、とのこと。

 餅木特任教授は、『学級崩壊』の定義を説明したのち、「ここ数年で、周りで学級崩壊が起きた、という人は手を挙げてください」と、院生たちに呼びかけます。手を挙げた院生に、家近教授は「じゃあ、差し支えない範囲でお話しできる人はいませんか」と続けます。その呼びかけに応じ、現職教員院生と、小学校での学習指導員を経験した学部卒院生が、それぞれ身近に起きた学級崩壊の事例を紹介しました。

 次に餅木特任教授は、10分類の学級崩壊のパターンと、さらに学級崩壊の構造について、教師の側の問題?子どもの側の問題?学級担任歴の問題という、3つの側面から引き起こされる『システム論』を紹介します。続いて、家近教授は「『システム論』は、次々と悪いことが発生して、悪循環が起きてしまうという考え方です。学級崩壊を立て直すには、どこかで悪循環が起きていないかを見つける視点や、一つひとつの悪循環を断ち切ることが重要です」と解説します。

Zoomで学生とやり取りする家近教授と餅木特任教授

 その後、餅木特任教授から「隣のクラスが学級崩壊の傾向があり、授業が成立しない。同じ学年の教師として、あなたならどうしますか」と問題提起を行います。院生たちは早速、Zoomのブレイクアウトルームで3~4人程度のグループに分かれて話し始めます。「『あなたならどうするか』と問いかけることで、現職教員院生と学部卒院生、どちらも積極的に話し合えるようにしています」と家近教授は言います。

 先生方はブレイクアウトルームを順番に回って話を聞きます。ある院生が「隣のクラスの子どもから話を聞いて、子ども理解とともに、何に原因があるのかを考えます。というのは、最終的には担任の先生に主導権を戻さないといけないので、子どもと担任の先生が思っていることの妥協点を見つける必要がある。その仲介役のような役割が必要かと思う」と発表しました。他の院生たちも、現場で経験したことや、今までの学びをもとに『自分ならどうするか』を制限時間いっぱいまで話しました。グループワークを終え、家近教授は「当事者意識を持つこと」「抽象的な議論ではなく、具体的な行動を話すこと」「一人ひとりが何をできるかを考えること」などの対応のポイントをまとめます。餅木特任教授は、「子どもへの効果的な関わりを文書化し、校内に共有したこと」「学校づくりのグランドデザインを策定したこと」など、小学校の校長や教育委員会での経験をもとに、多様な立場での実践を語ります。

グループワークを終え、話し合う家近教授と餅木特任教授

 この授業のねらいについて、生徒指導の基本的な事項を理論的に学び、自らの指導に対して「そういうことだったのか」と理解することで、実践力を付けてもらうこと。また、わかりやすい事例を多く紹介することで、実際に困ったときに「授業で学んだな、こういうことだったんだな」と活かしてもらえるようにすることだと、先生方は言います。「生徒指導は『校則を守らせる』『問題行動を解決する』等のイメージが先行しています。でも、本来の生徒指導が『自己実現』や『人格形成』等の、非常にポジティブなものをめざしているという本質に立ち返り、生徒指導に臨む態度や技術を身に付けてほしい」と餅木特任教授は話します。

 院生たちは、今後も生徒指導の理論を学び、様々な事例において、『自分ならどうするか』を考え、院生同士で交流することを通じて、実践力を磨いていきます。

【授業DATA】

対象学年 :大学院1回生
主な対象学生:連合教職実践研究科(連合教職大学院)スクールリーダーシップコース?援助ニーズ教育実践コース
開講期:2021年度前期 火曜7限

(2021年6月取材)
※掲載内容はすべて取材当時のものです。

最新記事一覧はこちら

バックナンバーはこちら